【対訳】To The Last -James Blake「切なさの夜明け」

To The Last』は2013年にリリースされたJames Blakeのセカンドアルバム『Overgrown』に収録されています。まるで海辺に立っているかの様な気分になる、美しい世界観が閉じ込められた楽曲です。

本記事ではそんな『To The Last』の歌詞を和訳していきます。寂しさの夜明けの様な世界が落とし込まれた言葉を見てみましょう。

『To The Last』対訳

We’re going to the last
You and I
We’re going to the last
You and I
僕らは最後まで向かう
君と僕

You’re to me than any any son
僕にはどんな奴らより君が君らしく思える

Never in a fore and only son
前へ行くことも奴らだけになることも決して無い

And I will love you
そして僕は君を愛す
Tell me if we’re wrong
もしも僕らが間違っているなら教えて

All I’ve seen is what you’ve done
僕が見た全ては君がしたこと

To the last, you and I
To the last, you and I
最後まで、君と僕

If only, if only If only,
if only If only, if only
If only, if only
もしも

You can hide yourself
君は隠れることができる
In so many words
たくさんの言葉の中に

And I will love you
そして僕は君を愛す
Tell me if we’re wrong
もしも僕らが間違っているなら教えて

All I’ve seen is what you’ve done
僕が見た全ては君がしたこと

We’re going to the last You and I
We’re going to the last You and I
We’re going to the last You and I
僕らは最後まで向かう
To the last You and I
最後まで、君と僕

Molly
Molly

分厚く、存在感のあるサウンドが、サビに向かって開けていく様な展開が大好きです。海辺の夜明けの様な音が重なったサビやアウトロも素晴らしく、私はいつも、孤独で深淵に立ち尽くす時間の終わりを感じます。

James Blakeの心の向き合い方

イングランドの音楽家、ジェイムス・ブレイク。彼の歌詞やメロディーは美しくも、どこかに孤独を感じる、それが最大の特徴で魅力である様に私には思えます。そして彼は、自身が精神面での問題を抱えていたことなども、自身のインタヴューで語っていました。そんな彼の、以前の興味深い発言もご紹介します。

I listened to my old music and I really didn’t sound like a happy person. I wouldn’t want to be one of those artists that keeps themselves in a perpetual cycle of anxiety and depression just to extract music from that.

自分の過去の曲を聴くと、あまり幸せな人間とは思えない。僕は永続的な不安の繰り返しや、そこから生じた音楽の憂鬱にみ多く様なアーティストにはなりたくなかった。
-Pitchfork James Blake and the Pursuit of Happiness より

ブレイクは自身の不安や孤独が、曲に反映されていることを感じ、自分はどうありたいか、考えていた様ですね。

Molly
Molly

孤独や不安を極に落とし込むことが、陰鬱でネガティブな印象のみを抱えてしまうのでしょうか…。Pitchforkは以前、ブレイクが発表した楽曲『Don’t miss it』に対しJames Blake is still sad ジェームス・ブレイクはまだ悲しんでいるとコメントし、少々批判を受けていましたね…。

©︎2019 The Fader

そして別のインタヴューでは、以前のブレイクの音楽に現れている不安と、それに立ち向かうことが創造性に与える影響についての恐怖を尋ねられ、こう答えています。

I honestly didn’t care. I’d rather be happy than good at music. The proof is in the album I made. I made the album during and after feeling better — doing all that work for three or four years, pretty much every day. That’s all I was focusing on, and in between I made music. If that’s what the work you do on yourself sounds like, then I’m very happy to engage in that way. I was definitely losing my way musically. I wasn’t able to finish things. I wasn’t confident. I wasn’t clear. I was starting to not be able to write really effectively.

実を言うと全く気にしてないよ。音楽で成功するよりも、幸せでいる方が重要。それは僕が作ったアルバムが証明してくれている。僕はアルバムを、気分が良い時、それかその後に作っていたよ…全ての作業をほぼ毎日、3〜4年間行っていた。それが僕の集中する全だった、その間に曲も作った。もしそれがあなた自身のことの様に思ってもらえる作品なら、僕はこのやり方で作業できることがとても嬉しいよ。僕は明らかに音楽的に道に迷っていた。物事を遂行することができずにいた。自信が無かった。明瞭で無かった。実質、物を書くことができなくなり始めていたんだ。
-Fader How James Blake learned to not be alone より

また、自身精神状態の治療に、仕事を取り入れたとも話していました。

I did EMDR — Eye Movement Desensitization and Repetition. I’m not a scientist, but I’d describe it as a reverse-engineering of REM sleep, where you target specific memories and allocate them to the “not important” pile in your PTSD mechanism by moving your eyes left and right. It dislodges and disconnects from past traumas and irrational thought patterns. An event that happened to you when you were younger suddenly doesn’t evoke anxiety. Rather than overwhelming your brain with these memories, you have control over what gets shifted and it takes away a significant portion of your pain.

僕はEMDRという、眼球運動の鈍感化と反復を行ったんだ。僕は科学者じゃないけど、レム睡眠のリバースエンジニアリングとして説明するよ特定の記憶を標的にして、それを目を左右に動かすことによって、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のメカニズムにの「重要ではない記憶」の山に分類する。それは過去のトラウマや、不合理な思考パターンを取り除き、切り離してくれる。過去に起こった出来事が、突然不安を呼び覚ますことはなくなるよ。そういう記憶で脳を圧迫するのではなく、方法をコントロールすることによって苦痛の大部分を取り除くんだ。
-Fader How James Blake learned to not be alone より

Molly
Molly

ブレイクが以前に使っていた自己治療という言葉にも、私はかなり興味を持っていたのですが、そんな彼らしい解決方法の様な気がしました。私が彼に感じる最大の魅力は、自分の傷や苦痛に向き合い、表現しながらも癒していこうとするスタンスにある様に思えます。

©︎2019 ES.

幸せに人生を過ごすことを目指す

そして、自分にとっての成功を尋ねられた時の、ブレイクの答えは前向きで素晴らしいものです。

It’s clocking off and going to live your life, honestly. I’ll always be able to generate some kind of income from music because I can play and write. As long as I just adjust my expectations of my lifestyle, the main priority is just enjoying the day. I don’t want much more than that. I’m still ambitious musically, but it’s gone from being approval-related and proving a point to just wanting to be part of the conversation — to have my own little lane and enjoy creative moments with other people. Have those “Eureka!” moments and not being tied to the perfect image, being okay with people thinking you’re less cool than they think you are, being a little bit of a weirdo, and being okay with people discovering that.

実を言うと、仕事を終えて自分の人生を生きることなんだ。僕は演奏や作曲ができるから、いつでも収入を作ることができる。自分のライフスタイルへの期待を持つ限り、最優先事項はただ1日を楽しむこと。それ以上は望まないよ。まだ僕は音楽において野心的だけど、それは会話の一部に対する不足に関係する、あるいはそれを照明する承認欲求に変わりつつあるー些細でも自分スタイルを持ち、創造的な瞬間を人々と楽しむんだ。「発見した!」という瞬間を持ち、完璧なイメージに縛られず、自分を想像よりもクールでないと思う人々に対して平気でいること、少し変人であることを、他人に知られたって構わないよ。
–Fader How James Blake learned to not be alone より

Molly
Molly

彼は素敵な恋人ができたり、心と向き合うことによって、人生を謳歌する素晴らしさについてしったのかもしれませんね。私は、寂しげでもどこか希望を感じる彼の楽曲には、そんな彼の思想が滲み出ているのだと思っています。

©︎2019 ES. 恋人のジャミーラ・ジャミルと

おわりに

今回はジェイム・ブレイクの『To The Last』の和訳と、彼の曲作りや、心の病との向き合い方に関する思想をご紹介しました。「最後まで」という一見アンニュイな言葉の中に、孤独の終わりや、誰かと関わる人生を考えさせられました。彼の繊細で、心の葛藤を乗り越えたからこそ作れる楽曲達には、独特の魅力がありますよね。また、彼の様に精神疾患との闘病について言及し、同じ様な状況の人々に希望を与えるスタンスも、私はとても魅力的に思っています。

Molly
Molly

天才は孤高である必要は無いし、心の弱みや、人と異なる事とか、正直な表現はネガティヴなことだけを孕んでいるわけでは無いのです。寂しげな横顔に眠る、ささやかで確かな希望を見逃したくはありませんね。

©︎2017 Okeyplayer.

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