「あの瞬間に戻ることができたら…」そんな風に、思うことはありませんか?生きていると、後悔や失敗は付き物ですよね。今回ご紹介する「アバウトタイム〜愛おしい時間について〜」は、そんな願いを叶えられる主人公が人生の素晴らしさや、過ぎていく時間の輝きを教えてくれる素晴らしい作品です。幸せな人生を送る秘訣を優しく教えてくれます。


この映画を大好きな方、きっといっぱいいらっしゃるかと思います。世界と時間の見過ごしてしまう輝きを切り取った映像が溢れていて、私は見るたびに、瞳が磨かれたような気分になる…。
Story
主人公は、ティム。両親と妹、そして伯父の5人でイギリスのコーンウォールに暮らしていました。ティムは穏やかな街で、個性的で楽しい仲良しの家族と、海辺のピクニックや、野外で映画観賞を楽しむ幸せな幼少期を過ごします。しかし、自分に自信を持てないティムは年頃になっても恋人ができず。やがて迎えた21歳の誕生日に、父からこの家に生まれた男性は、タイムトラベル能力を持っていることを告げられます。ティムは驚きつつも、恋人を作るべくタイムトラベルをするようになります。そしてティムは弁護士を目指してロンドンへ。そこでメアリーと出会い、恋に落ちます。その後もタイムトラベルを続け、非凡な人生を送るティムですが、やがて幸せな人生送るための重大な秘訣に気がついたのです。
Cast
監督・脚本 | リチャード・カーティス |
ティム | ドーナル・グリーソン |
メアリー | レイチェル・マクアダムス |
ティムの父 | ビル・ナイ |
ティムの母 | リンゼイ・ダンカン |
キットカット | リディア・ウィルソン |
シャーロット | マーゴット・ロビー |
ハリー | トム・ホランダー |
リチャード・カーティスの素敵な感性
「アバウトタイム〜愛おしい時間について〜」の監督と脚本を務めたリチャード・カーティスの、ストーリーの着想を得た素敵な感性について、少しご紹介しますね。

ストーリーのアイデアはどこからやってきたの?
カーティス監督は、「アバウトタイム〜愛おしい時間について〜」の脚本の着想を得たものは、普通の日常で手に入れる幸せについて考えたことだと言います。
「アイデアは…すごくゆっくり完成した。私はサイモンという友人とランチを食べていたんだ。彼はニューメキシコに住んでいて頻繁には会えないけど、会いに来てくれたんだ。そして私達は様々な話をした。昔の自分達が幸せだったかどうかも話したよ。そして自分でも少し驚いたんだけど、私は “そうでもないな…” と言ったんだ。人生におけるただの幸せ。人生は幸せをくれるのかな?そこで私達は、完璧な日はどんなものかについても話した。サイモンのやりたいことを聞いて、私の意見も言った。昔の私は、完璧な日とは、モンテカルロに飛んでグレース・ケリーとデートして、100万ポンド手に入れて、オスカーにノミネートされたっていうメールを受け取ることだと思っていた。でも今は全て魅力的じゃない。すごく怖いし不自然だ。」

「そしてなんとなく、私が過ごした今日が、完璧な日だと思ったんだ。親友とランチを食べた。子供を学校に送った。そして家族とディナーを食べる。そう考えた翌週に、これは描くべき題材だと思った。どうやって幸せになるか、どうやったら、大きな成功や功績とか特別を望む日々より、平凡な日々で幸せになれるか。そして私は、これはとても良い題材だけどシンプルすぎると思った。そして、どうしたらこの題材を面白く、楽しく描けるか考えた。そして “こうしたらどうだろう?もしタイムトラベルが存在するなら、なんでもできて、好きな日を生きて、全てを自由に選べるキャラクターができる。そんな非凡な人が、平凡な日々を特別なものだと認めるストーリーなら、この映画は見る価値がある” そしてタイムトラベルの設定と、登場させるジョークを考えた。それから人生の悲しみと幸せも。そうしたら突然、映画が生まれたんだ。」


平凡さに潜む幸せは、非凡な人生よりも、もっとずっと価値のあるものなのかもしれませんね。
ティムを演じたドーナル・グリーソンについて
そしてカーティス監督は、ティム役のオーディションにきた時のドーナル・グリーソンについても、ちょっと面白いストーリーを語っていましたよ。
「ドーナルのオーディションは面白かったよ。私は、多くの若い俳優をオーディションしたかった。昔一緒に映画を作った、ヒュー・グラントのような完璧な人を見つけようと考えていたから。だけどドーナルは、すごく立派なオレンジの髭を蓄えて来たんだ。『アンナ・カレーニナ』の撮影中だったからね。」

「だからドーナルは、野生の森から大きなナイフを持ってやって来たみたいな風貌だった。これ以上ないくらい、イメージにはとても合わなかったよ。そして私は、なんとか髭の無い彼を想像しようとした。彼を1回、そして2回オーディションして採用することにしたんだ。彼は映画への良い手がかりを持っていたからね。彼は素晴らしい俳優だ、そして私の好みの優しい性格。私は一緒に働く人を好きになりたいんだ。それから彼はすごい喜劇演技の才能を持っている。それがいつも私の作品への足掛かりになった。その才能は、アイルランドのコント番組で発揮されていたよ、すごく面白い演技だった。演技の引き出しがすごいんだ、優しい演技や馬鹿げた演技とかね…。」

すごく立派な髭のドーナル…!さすがに演技の幅が広いと評判の俳優ですね!イメージと全然合っていなかったのに、彼を抜擢したカーティス監督もすごいな…。
見所をストーリー順にご紹介

ここからは、ストーリー順に見所を、ネタバレを含めてご紹介。
ティムのユニークで愛に溢れた家族
物語は、主人ティムによる家族紹介から始まります。

ティム・レイク
ヒョロっとして髪はオレンジ。自分で「too skinny, too orange」なんて言って、ちょっと自信が無さそう。

ママ (メアリー・レイク)
頼もしくて自由で多忙。感情に流されない性格。そんな彼女のファッションアイコンは「Queen」。

パパ (ジェームズ・レイク)
家族の中ではノーマルな方。50歳で大学の教員を退職してからは、時間を持て余して、読書とおしゃべりと卓球を楽しんでいる。いつもティムに卓球で負けている。

ママの弟 デズモンドおじさん
いつもきっちりとした服を着る主義。天然で最高にチャーミングな人柄。彼の思考は誰にも読めない。

キットカット (キャサリン・レイク)
ティムの妹。自然体でいつも裸足。妖精のような目をしている。紫色が大好きで、いつもの服も車も紫。ティムにとって世界で1番素敵な存在。
少しユニークで、とても仲の良い家族です。ティムが21歳になるまで、どんな天気でも毎日浜辺でピクニックを楽しみ、金曜の夜は庭で映画鑑賞。ティムは幸せな幼少期を過ごしました。


雨でも傘をさして庭で映画を見る…!なんて素敵な家族行事!ちなみにレイク一家の暮らすのは、イングランド最南西部にあるコーンウォール地方のランズ・エンド。岬から見える、最も長い海岸線を持つ海と、長閑な街並みが魅力的な地域です。こんな素敵な浜辺で、散歩したり、ピクニックをしたり…素晴らしい幼少期ですね。

レイク家に伝わる不思議な能力
しかしティムは、年頃になっても恋人ができずにいました。大晦日のパーティーが行われるも、全然楽しめず。そして二日酔いで最悪の翌朝、パパから人生を変える重大な秘密を明かされます。なんとレイク家の男性は、代々タイムトラベル能力を持っていると言うのです。どこでも良いから暗い所に行って拳を握り、戻りたい場面を頭に浮かべるだけで過去に戻れる、そう聞かされたティムは驚いてなかなか信じようとしません。

良いリアクションだ。私は “Fuuuuuck!” だ。70年代だったから。

そしてティムは、半信半疑のまま部屋のクローゼットでパワーを試します。すると、昨晩のパーティーにタイムトラベルできたのです。現在に戻ってパパに詳細を聞くと、パパはこの力を使ってひたすら読書をしていました。「ディケンズは3回読んだ」と嬉しそう。一方ティムは、この力を使って恋人を作りたいと考えました。

この時に映るティムの部屋に、アメリのポスターが映るの最高!

初恋のシャーロット
そしてある夏、キットカットの恋人のいとこのシャーロットが、レイク家に2ヶ月滞在することに。そして美しい彼女に、ティムは恋をします。

ティムはシャーロットの滞在最後の夜に、思い切って告白しますが、「たっぷり時間はあったのに、なぜ今なの?」と最後の夜に告白したことを咎められます。それを受けてティムは、1ヶ月前に戻ってもう1度告白。すると今度は「最後の夜にもう1度言って」と言われ、結局上手くいかず。そしてタイムトラベルを駆使しても、愛は手に入らないとティムは学びました。
ロンドンでの新たな生活
そしてティムは、弁護士を目指してロンドンへ引っ越し。

中指を立ててティムを見送るキットカットを笑うパパ。パパはピーズサインで見送っていました。最高なパパだと思ったシーンです。

アビーロードの近くに住んでいる、パパの脚本家仲間のハリー宅へ下宿することに。しかし、ハリーは気難しく乱暴な男でした。そして就職した法曹界も男性だらけ。恋人が見つかる気配は無く、できたのは友人のローリーだけ。

そして半年が過ぎたある日、悪友ジェイに誘われ、視覚障害者のウェイターが働くブラインドバーに行くことに。店内は、何も見えない真っ暗闇。そこで2人は、ジョアンナとメアリーに出会います。ティムはメアリーとお互い顔が見えないまま、楽しく会話を始めます。メアリーはとてもチャーミングな人柄で、ケイト・モスが大好き。やがて彼らは仲良くなり、店を出て顔を見せ合うことに。ティムとジェイが先に外に出て待っていると、まずはジョアンナがやって来ます。派手な服装でブロンドの彼女にジェイはメロメロ。続いてメアリーがゆっくりと出て来ました。

ティムはメアリーにすっかり恋をします。電話番号を聞くと、幸運にも彼女は教えてくれました。

古くてダサい携帯が大切な宝物になった。
そんな浮かれているティムに「私のことが好きなの?流行遅れの服でも?」とメアリーは自信なさげ。しかし「その服も大好き」とティムは言います。
「髪はどう?ちょっと茶色すぎるけど…」
「茶色が好き」
「前髪は最近作ったの」
「完璧だよ。最高の前髪だ」
話しているとジョアンナが早く帰ろうとメアリーを急かします。メアリーはまた会いたい、と素敵な言葉を残して帰っていきました。ティムも嬉しそうに笑みを浮かべながら帰路につきます。

Paul Buchananの『Mid Air』がBGMの美しくて印象的なシーン。
君の襟についたボタン
The buttons on your collar
その髪の色
The colour of your hair
君のことが頭から離れない
I think I see you everywhere
このまま生き続けたい
I want to live forever
ダンスする君を見ていたいから
And watch you dancing in the air

ちなみにティムとメアリーが出会ったブラインドバーはロンドンに実在する「ダンルノア(Dans le noir)」と言うお店。完全な暗闇の中、サプライズメニューを楽しむ面白いお店です。最初に通される明るいウェイティングルームで、4つのコースの中から1つを選び、視覚障害者ウェイターのガイドで、暗い席へと案内されます。口に入るまでどんな料理がサーブされたか分からないので、ドキドキ感満点!料理は素材にこだわった美味しいものばかりだそうです◎

メアリーを失ったティム
しかし帰宅すると、同居人のハリーはとんでもなく不機嫌。自分が手掛けた脚本の舞台の初日が、役者がセリフを忘れたせいで悲惨な結果になったと言います。気の毒に思ったティムは、舞台の時間まで遡り、セリフを忘れた役者にカンペを出して舞台を成功させました。ハリーは上機嫌で、ティムも一安心。しかし、メアリーと出会うはずの時間に舞台を救ったので、ティムはメアリーと出会わなかったことになってしまいました。落ち込むティムですが、新聞でケイト・モスの写真展が開催されること知り、メアリーにまた出会うため毎日写真展に通い始めます。


ここでは、The Cureの『Friday I’m In Love』が流れるのですが、シーンにぴったり過ぎて最高です。ティムは他のことを全部気にせず、ひたすらメアリーを待ってる…。
I don’t care if Monday’s blue
月曜が憂鬱でも気にしない
Tuesday’s grey and Wednesday too
火曜と水曜が曇っていても
Thursday, I don’t care about you
木曜だってどうでも良い
It’s Friday, I’m in love
金曜には恋をしている
そしてある日、キットカットに付き合ってもらってメアリーを待っていると、ついに彼女が現れたのです。ティムは声をかけて懸命に距離を縮めようとしますが、メアリーは不審がります。なんとかお願いして一緒に展示を見て回ることに成功しますが、なんとメアリーに恋人がいることが判明。ティムと出会う前に、ジョアンナのパーティーでルパートという男性と出会っていたのです。ティムは慌ててパーティー会場の住所や時間を聞くと、そこまでタイムトラベルします。

メアリーとの2度目の出会い
ティムは話で聞いたパーティー会場で、まだ恋人のいないメアリーを見つけ、早速食事に誘います。急な誘いに戸惑うメアリーですが、ケイト・モスが好きだと言うティムに興味を持ち、誘いを受けました。2人の会話は弾み、あっという間に打ち解け、メアリーは食後にティムを自宅に招いてくれました。やがて2人は2度目の恋に落ち、ティムはようやく愛を手に入れたのです。


ちなみにティムとメアリーがパーティーを抜け出して行ったレストランは「ゾルバズ グリークタベルナ」と言う、ロンドンのハイドパーク近くにあるギリシャ料理レストラン。

2人の愛に溢れた日常は順調に流れていき、同棲も開始。

ティムとメアリーの幸せな日常が、Jon BodenがカバーしたThe Waterboysの『How Long Will I Love You』に乗って流れていきます。パディントン駅を舞台とした、2人の朝の通勤や、イベントの仮装姿など…見ていて心が芯から温まるシーン!
How long will I love you?
どのくらい長く君を愛するだろう?
As long as stars are above you
それは君の真上に星が輝く限り
And longer if I can
それよりも、もっと長く

ティムのプロポーズ
そんなある日、メアリーの両親が急に訪ねてくることに。両親はフォーマルな雰囲気で、メアリーはティムを気に入ってもらおうと必死。ティムも緊張しながらも、なんとか乗り切ります。

両親が来ることを打ち明ける時にメアリーは「悪い知らせがあるの」と言うのですが、ティムは「死ぬの?」と言いメアリーは「もっとマシ」と言呆れ気味。すると「僕が死ぬの?」とティムは言うの…。めちゃくちゃ細かいシーンだけど…メアリーが死ぬより自分が死ぬほうがマシだと思ってるティムに毎回グッと来る…!愛が深い…!

その翌日、ティムは劇のチケットを手に入れたのでメアリーを誘いますが、疲れているからと断られます。そこで同僚のローリーを誘って劇場へ。そして劇終了後、偶然にもシャーロットと再会。そしてティムはシャーロットから食事に誘われ、2人でレストランへ。食後に彼女を家まで送ると、さらに彼女は部屋によっていくようにティムを誘います。

しかしティムはその誘いを断り、一目散に帰宅。メアリーにプロポーズをしたのです。

あまりに芝居が退屈で、プロポーズでも思いついたの?
寝ていたメアリーはふざけていましたが、真剣なティムに気付いて驚きます。そしてメアリーの返事は、イエス。この時ティムはムードを盛り上げるバンドを手配していましたが、「人が大勢いるような、みんながよくやるような凝ったプロポーズをしないでくれて嬉しい… 。そう言うの苦手なの」と言うメアリーの言葉に、慌ててバンドを家から追い出しました。

ティムの家族とメアリー
そしてティムは、メアリーを連れて実家へ。家族はチャーミングなメアリーを気に入ります。

美人すぎる女は良くない。笑いの感性を磨かず、性格もねじ曲がる。
そしてレイク一家とメアリーは、海辺のピクニックへ。クリームティーを楽しみます。そこでママは「あなたの欠点は何?小さな弱点とか」とユニークな質問。メアリーは「自信が無いこと、それから時々カッとなること」と答えました。それに対してママは「それは男達に言うことを聞かせる1番の手よ」とイカしたコメント。そしてメアリーは「ティムが大好きでたまらないのも弱点」と続けます。ママは「私もよ。でも本人に言っちゃダメ、自惚れるから」と微笑みました。

ティムが、パパにメアリーの印象を尋ねると、パパは「お前よりも好きだ」と言いとても気に入った様子。そして2人は、いつも通りに卓球を楽しみました。そしてディナーの時間、ティムは家族一同にメアリーとの婚約と、メアリーの妊娠を発表。もちろん家族は大喜び。赤ちゃんが生まれるので、挙式はすぐに挙げることになりました。

ティムとメアリーの結婚式
そしてある晩、挙式の手配を進めないティムにメアリーは、1つ挙式について決めるごとに、服を一枚ずつ脱いでいくと提案。ティムはやる気を出して挙式場や牧師を決定。加えてティムは、パパも大好きなローマ出身の歌手、ジミー・フォンタナの『イルモンド』を入場曲に使いたいと提案するも、メアリーは却下。しかし、メアリーのおかげで挙式の手配はテンポ良く進みました。


なんだろうこの2人…いちいち可愛い…!ティムが地元のモジャモジャ頭の牧師を提案したら「ハリーポッターのハグリットね」って言うのも最高◎ そして極め付けは、パンツ一丁で部屋を逃げ回るメアリー!可愛過ぎて印象的なシーンです!
そしていよいよ、結婚式当日。天候は生憎の曇り空。しかし入場曲がかかると、ティムは大喜び。なんとメアリーが却下した、ティムとパパの大好きな曲『イルモンド』が流れ出したのです。「嘘だろ!」と喜ぶティムに、参列席のパパも驚きます。メアリーは『イルモンド』を嫌がっていましたが、ティムのためにこっそり入場曲にしてくれていたのです。


赤いドレスのメアリーが素敵過ぎます…!個人的にはヴァージンロードを1人で歩くスタイルも最高に素敵だった…!このしっかりとした自分達のための挙式感…本当に最高…!
「あなたのため」とメアリーはティムを指差します。ティムとパパは小躍りして喜びました。


ちなみに結婚式が行われたのは、コーンウォールの漁村ポートロー 。何百年も前から変わらない歴史のある街並みが美しい村です。
そして式を終え、パーティー会場に移動する時には天気は大荒れ。凄まじい雨風にティムとメアリーと参列者もずぶ濡れ。それでも2人の笑顔は絶えません。

そして一同は部屋に集まり、パパのスピーチタイム。

私の人生で愛した男は3人しかいない。父は冷たい男だったので除外して、1人目はデズモンドおじさん。それからB.B.King、もちろんだ。そしてそこにいる若者。結婚する者への私のアドバイスは、人生は結局同じだということ。歳をとり、同じ話を繰り返す。しかし、パートナーにするなら優しい人にするべきだ。そしてこの優しい男は、良い心を持っている。私の人生に誇れるものはあまり無いが、ティムの父であることは心から誇りに思う。

そしてパーティーも終盤。ママとパパがスローダンスを楽しむのを見つめながら、ティムは悪天候での挙式を後悔しているかメアリーに尋ねます。するとメアリーは最高の一言を言いました。

始まった私達の人生も同じ。いろんな天気の日がある。楽しんで!
キットカットの悲劇
それから間も無く、メアリーは女の子を出産。ポージーと名付けました。そしてティムは大きな家に引っ越したり、ポージーを可愛がったりと、豊かな日々を過ごします。いつの間にか、タイムトラベルの出番も無くなりました。しかし、ポージーの1歳の誕生日パーティーで事件が起こります。みんなが集まっても、キットカットがいつまでも到着せず。するとキットカットの恋人のジミーが現れ、彼女と喧嘩して彼女が酔ったまま車で家を飛び出したと言います。そこでティムはバズ・ラーマンの『Everybody’s Free To Wear Sunscreen』を引用します。
Don’t worry about the future; or worry, but know that worrying is as
未来を心配するな、心配とは
Effective as trying to solve an algebra equation by chewing bubblegum
代数方程式をチューイングガムを噛むことで解こうとするようなものだ
The real troubles in your life are apt to be things that
人生における本当の問題は
Never crossed your worried mind
心配を遥かに超えるものだから
キットカットは飲酒運転で事故を起こし、病院に運ばれていました。

傷だらけのキットカットを見て、思わずティムは彼女が出かける前までタイムトラベル。彼女を迎えに行き、事故を防ぎました。そしてティムは、悪い男とつるみ、深酒をし、働かないキットカットを立ち直らせたいと考えます。そしてティムは思い切って、キットカットにタイムトラベルについて話しました。驚く彼女をジミーと出会う前に連れて行き、人生を変えさせたのです。

パーティーで不可解な行動をする2人を、意味深な表情で見つめるパパ。きっとパパには全てお見通しなのです。

現在に戻ると、彼女はティムの友人ジェイと恋人になっていました。これにはティムも一安心。
タイムトラベルの秘密
そしてティムは帰宅し、安心しながらポージーを抱えます。しかしポージーは、別人になっていました。パパに相談すると、子供の出生前のことを変化させると、子供が変わってしまうと言うのです。タイムトラベルの新たな秘密を知ったティムは、仕方なくキットカットの人生を元に戻しました。そしてキットカットに献身的に寄り添い、ジミーと別れて禁酒もすることを約束させます。

幸せになる秘訣
しばらく忙しい日々を送っていましたが、パパが癌で余命が短いことが判明します。実家に戻ると家族一同、特にママはひどく落ち込んでいました。

運命の神に怒りまくってる。
パパのいない人生には全く興味がないの。
ティムがパパの書斎に行くと、パパは飄々とした様子で病状について話しました。タバコが原因で、急いで検査をしたが、手遅れだったと言います。そして余命はわずか数週間。タイムトラベルで幾度かこの場面を繰り返したパパは、一見淡々としていましたがひどく落ち込んでいました。ティムはパパを抱きしめ、深い悲しみに表情を歪めます。

そしてパパは、ティムにタイムトラベルで幸せになる秘訣を話しました。
- 普通の人と同じように、1日ずつ普通に生活すること
- 毎日を同じように、もう1度繰り返すこと
緊張や不安で気付かなかった人生の素晴らしさに2回目は気付けると言うのです。そしてティムはパパの秘訣に従い、人生の美しい機微に気が付きます。

ここではRon Sexsmithの『Gold In Them Hills』が流れます。この方法でティムは、生活のあちこちに隠れていた人の笑顔や、優しいやりとりを見出していくのです。
ティムとパパ
しかし、ついにその日が訪れました。パパが亡くなってしまったのです。葬儀に参列すべく、ティムとメアリーはコーンウォールへ。ティムは葬儀の前にタイムトラベルで、いつかのパパへ会いに行きます。そしてパパの書斎を訪れると、そこには普段と変わらないパパが寛ぎながら本を読んでいました。そしてパパは、悲しげなティムを見て、ティムが自分の葬儀の日から来たのだと悟ります。そしてチャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』をティムに読み聞かせました。

I think the Romans must have aggravated one another very much, with their noses.
ローマ人は鼻が悩みの種に違いない
Perhaps, they became the restless people they were, in consequence.
だから結局彼らは不安だったのだ
Anyhow, Mr. Wopsle’s Roman nose so aggravated me
そして、ウォルプルスのローマ鼻は私を悩ませた。
そしてパパのリクエストだったNick Cave & The Bad Seedsの『Into My Arms』が流れる中、葬儀は静かに、そして深い悲しみと共に行われました。
But I believe in Love
でも私は愛を信じる
And I know that you do, too
あなたもきっと信じるだろう
And I believe in some kind of path
そこには救いの道があるんだ
That we can walk down, me and you
その道を僕らは歩くことができる、君と僕で
So keep your candles burning
ロウソクを灯して
Make her journey bright and pure
道を明るく照らして
That she’ll keep returning
あの人が健やかでいられるように
Always and evermore
いつも、そして永遠に
未来に進むことを選んだティム
それから、メアリーはもう1人子供が欲しいと言い出しました。もう1人子供が生まれれば、もう2度とパパのいる過去へタイムトラベルできなくなってしまいます。ティムは悩みましたが、「パパもそう望んでた」とメアリーの提案を受け入れることに。そして間も無く、メアリーは次の子供を身篭ります。ティムは子供が生まれる前に、タイムトラベルで足繁くパパへ会いに行きました。しかし、メアリーが臨月に入り、パパのもとへ行く最後の時がやってきてしまいます。楽しく卓球をしていたパパも、悲しげなティムを見てそれに気が付きました。

「私の息子」
「僕のパパ」
2人は互いに呟き、そして遠い昔の海辺の散歩へ向かうことにしました。2人は若い体に戻り、束の間の楽しい時間を過ごします。「ありがとう、パパ」とティムは言いました。

ティムの気が付いた幸せの秘訣
やがてティムも家族も、パパの死を受け入れ、再び穏やかな時間が流れ出しました。キットカットもジェイとの間に子供が生まれ、これまでにないほど幸せそう。一方ティムは、いつの間にかタイムトラベルをしなくなっていました。パパの秘訣の一歩先に進んだのです。

この日を楽しむために、自分は未来から来て、最後だと思って今を生きている。僕の非凡で、平凡な人生の。

そしてBen Folds の『The Luckiest』をBGMにティムの平凡な日常に隠れる、なんてことないのに、とんでもなく幸せな瞬間が流れていきます。
I don’t get many things right the first time
色んなことが最初は上手くできない
In fact, I am told that a lot
周りからもよく言われる
Now I know all the wrong turns
でもやっと気が付いた
The stumbles, and falls brought me here
つまずいて、転んだから今の僕がある
And where was I before the day
僕はどこにいたんだろう
That I first saw your lovely face?
君と出会って全てが始まった
Now I see it everyday
今は君に毎日会える
And I know that I am
僕は知っている、ここにいる僕が本当の自分なんだ
I am, I am the luckiest
今の僕は、最高にラッキーだ

僕達は、一緒に人生をタイムトラベルしてる。今を精一杯生きて、素晴らしい日々を噛みしめよう。
おわりに
いかがでしたか?私は何度見ても涙が抑えられないほど、感動してしまいます。時間の大切さや、平凡な日々に隠れている幸せは、忙しく余裕のない日々では見落としがちです。そんな時この映画を思い出すと、ふんわり幸せな気持ちになって、毎日を大切に生きようと思えるのです。非凡な主人公が築く、平凡な幸せのかけがえのなさは、私達にとてつもなく大きな、幸せへのヒントをくれます。人生に疲れて立ち止まった時、きっとあなたの役に立ってくれる映画です。

クスッと笑える瞬間も、人生を大きく動かされるような大切な瞬間も、この映画には詰まっていますよね。これから先も、たくさん見返しちゃうだろうな…。
参考文献
Firstshowing.net 『Interview: ‘About Time’ Writer & Director Richard Curtis on Happiness』
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