【ネタバレ解説】(500)日のサマー【セリフやストーリーも】

MOVIE

今回ご紹介するのはおしゃれで可愛い作品、「(500)日のサマー」です。

IMDbより引用

2010年1月9日に日本公開されたこちらの作品。(どうせならサマーとトムの出会った日の1月8日に公開すれば良かったのに、と思いました)アーティスティックな映像と音楽が特徴的で、今も多くの映画ファンの心を掴んで離さない名作です。単なるラブコメの枠には収まらないこの作品で描かれる、2人の交差する価値観や、心境を考えていきたいと思います。

映像がアーティスティックで美しい訳

(500)日のサマーを監督したのは、数多くのミュージックビデオの監督を務めてきたマーク・ウェブ。どうりで映像が美しい訳ですね。

2人の幼少期が流れるオープニングが素敵です。やがて出会う2人の物語の始まりに、気持ちが高まります。オープニングテーマとして使われてる曲は、ロシア出身のアーティストレジーナ・スペクター「Us」という曲。個性的で美しいメロディがこの映画とマッチしています。

ジェニー・ベックマンとは?

Author’s Note: The following is a work of fiction.
Any resemblance to persons living or dead is purely coincidental.
Especially you Jenny Beckman. Bitch.

原作者のメモ「これは架空の物語ある。実在する人物との類似点はまぎれもなく偶然である、
特にジェニー・ベックマンは。クソ女め。

冒頭では、こんな皮肉たっぷりの注意書きが流れます。これは、本作の脚本を手掛けたスコット・ノイスタッターが振られた女性、ジェニー・ベックマンについて書いた物。スコットはジェニーをサマーのモデルにしました。彼女と出会う前からスコットは、ロマンスコメディを描こうとしていましたが、彼のやや悲観的なセンスが、古典的でポップなハリウッドの市場にそぐわない事で、着想を得るのに苦労していました。そんな時、夢の様な彼女と出会い、別れを経験し、彼は愛は決して映画の様なものでは無いと気付いたのです。そしてその素晴らしい経験と傷ついた心を、この作品で表現する事に。ちなみに、この作品を見たジェニーは、「サマーよりトムの方に共感する。」と言ったそう…。

Story

グリーティングカード会社に勤めるも、建築家を夢見る冴えない主人公トムと、その会社に秘書としてやって来た自由奔放なサマーの、出会いと別れを描いたロマンスコメディ。トムはサマーに恋をして距離を縮めていくも、サマーから、真剣な交際をする気は無いと一線を引かれてしまいます。それでもサマーのそばにいたいトムは彼女を受け入れ、2人は親友以上恋人未満の関係を続けることに。次第にトムはサマーの引いた一線を超えて、2人の関係に疑問を抱き始めます。互いに対する気持ちのズレが現れ、2人の関係は崩れていってしまうのです。サマーを諦めきれないトムと、トムを運命の相手だと思えないサマーの関係の果てに、どんな結末が訪れるのか…。

Cast

監督マーク・ウェブ
トム・ハンセンジョセフ・ゴードン=レヴィット
サマー・フィンズーイー・デシャネル
マッケンジージェフリー・エアンド
ポールマシュー・グレイ・ギュブラー
レイチェル・ハンセンクロエ・グレース・モレッツ
オータムミンカ・ケリー
ナレーターリチャード・マクゴナガル

サマーはどんな女性?

身長は約168cm、体重は約55kg、足のサイズは25cm。高校の卒業アルバムに、スコットランドのバンドベル・アンド・セバスチャン「The Boy With The Arab Strap」の歌詞「Color my life with the chaos of trouble」を引用すれば、彼女の住むミシガンで彼らのアルバムが大売れ。彼女を雇ったアイスクリーム屋の売り上げは212%増、アパートを借りると家賃は9.2%も安くなる。職場への通勤の間に人々から18.4回も振り返られる。こんな驚くべき「サマー効果」の持ち主です。サマーは所謂、マニック・ピクシー・ドリーム・ガールですね。そんな「サマー効果」がトムのもとにもやって来ます。

Molly
Molly

混沌と問題で私の人生を彩って」なんて、エキセントリックなサマーらしいチョイスですね。また、サマーは画家だとマグリット ホッパーも好きで、トムと趣味が合うのです。

サマーとトムの気持ちのズレ

サマーを失い自棄になったトムを慰めるトムの友人と妹、そんなシーンから映画は始まります。トムはサマーから、もう会うのを止めようと切り出され、レストランで言い争いをした事について話しました。

わからないよ。気にもしないし。僕は楽しいよ、君もそうだろ?
「いつも言い争ってばかりなのに。」
「そんなのクソ食らえだ。」

「私達ここ何ヶ月もシドとナンシー状態よ。」
「サマー、シドはナンシーをキッチンナイフで7回も刺したんだ。僕らは言い争いはあるけど、僕がシドみたいになるとはとても思えないよ。」
「違う。私がシド。」

サマーはセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスと恋人のナンシー・スパンゲンの事件に、2人の今の状態をなぞらえて話したのです。それを聞いたトムは、運ばれて来たばかりのパンケーキとサマーを残し、無言で店を去りました。そんなトムにサマーが言った一言はトム、行かないで。あなたはまだ私の親友よ!

Molly
Molly

シドはナンシーを刺し殺したとされています。ちょっと傷つく例えですね…。その上恋愛感情も一切持たれていないとくれば、店を飛び出したくもなります。しかしこんな険悪で不毛な関係に、うんざりしていたサマーの気持ちもよく分かりますね。

2人の出会い

トムとサマーはグリーティングカード会社の同僚として出会います。トムは偶然サマーと乗り合わせたエレベーターで、ヘッドホンで音楽を聴いていました。その時彼が聴いていたのはイギリスのバンドザ・スミス「There Is a Light That Never Goes Out」です。その音漏れを聞いたサマーは、私もスミスが好きだとトムに話しかけます。

Molly
Molly

この時、歌を口ずさむサマーがすごく可愛いです!音楽好きなら、1度はあこがれてしまう出会いですね…。

©︎2009 IMDb

それを機に、すっかりサマーを気に入ったトムは、サマーに近付こうと奮闘します。

Molly
Molly

出だしの壊れた関係性から、時系列を飛ぶ様にこの作品は進行していきます。(500)の中の数字が行ったり来たりして2人の500日間の関係を、飛び飛びに垣間見る様な感じです。リズミカルでわかりやすい演出なので、そこも魅力の1つです。

縮まるサマーとトムの距離

それから2人は、職場の懇親会で訪れたカラオケで仲が深まります。

Molly
Molly

ちなみにカラオケをしたレストランはThe Redwood Bar & Grilというお店。LAらしい素敵なバーみたいです!

このカラオケシーンで、サマーが歌ったのは、ナンシー・シナトラのSuger town、トムが歌ったのはピクシーズのHere Comes Your Manです。歌が上手な2人が最高なシーンでもあります。

©︎2009 IMDb

サマーはトムと彼の友人マッケンジーと飲みながら、自分自身でいる事を楽しむために、今は恋人が欲しく無いと話します。「恋愛関係は複雑だし傷つくし、そんな事必要?私達は若いくて、世界で最も美しい街に住んでる。深刻な事は置いといて、楽しめる時に楽しまなきゃ。」とサマーは言います。すると、そんな彼女に「もし恋に落ちたら?」と問いかけるトム。彼女は愛なんて物は存在しない、そんなのはまやかし。と言い切るのです。トムは彼女に「君は間違っている」と言い、2人の意見の相違が発生。しかし2人は険悪になる事はなく、寧ろサマーはトムに興味を持った様。眼差しは暖かく、何かを互いの中に見つけたのです。

©︎2009 IMDb

その後、酔っぱらったマッケンジーが「トムはサマーにぞっこんだ!」と伝えてしまいます。しかしそんなナイスパスを、トムは否定してしまうのです。

Molly
Molly

トムはサマーと友人になる所で足踏みしてしまいました。2人のなんとも言えない間がもどかしいです…。

夢の様なサマーとの日々

それからサマーとトムの距離はどんどん縮まっていきます。コピー室でのキス、イケアで手を繋ぎながら楽しくデート…。そんな時サマーはトムに「真剣な交際は求めていないの、それでも平気?」と問いかけます。サマーのそばにいたいトムは恋心を抑えて、それでも構わないと答えます。そうして2人の親友以上恋人未満、名の無い関係は続いていくのです。

©︎2009 IMDb

レコードを眺めながらサマーはビートルズの曲の中で、リンゴ・スターの歌う「Octopus’s Garden」が一番好きだと言います。リンゴ・スターが1番好きだと言うサマーにトムは、「リンゴ・スター好きなんてどこにもいない。」と言います。するとサマーは「彼のそこが好きなの。」とサマーらしい理由を言うのです。

Molly
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そんな風変わりで夢の様なサマーに、トムは翻弄されながらも必死についていきます。惚れた者の宿命ですね…。

それからも2人の楽しい日々は続きます。トムがお気に入りの場所であるアンジェラスプラザにサマーを連れて行き、サマーの腕に理想の街並みを描くシーンは可愛らしくて有名ですね。「あれは何?」とサマーは駐車場について尋ねると、「あれは駐車場、あれも駐車場…美しいものがここにはたくさんあるのに。わからないけど、僕は…もっと人々がそれに気づけば良いなと思うよ。」と答えます。街の美しさを語るトムが素敵なシーンなのです。

Molly
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ちなみに、このアンジェラスプラザと言う場所は、Angels Knollと言うロサンゼルスの公園のことで、実際に2人が座ったベンチもあります。ロスの真ん中あたりに位置する公園で、見晴らしも良く素敵な場所みたいですよ!残念ながら今は閉鎖されているそうですが…。

©︎2009 FILM OBLIVION
Molly
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以前はこの様な映画のロケ地だと示す看板が貼ってあったみたいですが、公式ではなかったため、こちらも今は外されてしまったそう。可愛いのにちょっと残念ですね。

©︎2009 FILM OBLIVION

そんなある日、サマーはトムを部屋に招きます。彼女の特別な領域に入れてもらえたトムは、サマーの彼に対する壁が低くなってきているのを感じます。そしてサマーはトムに夢の話をします。

「時々、空を飛ぶ夢をみるの。最初は私、超人みたいな早さで走っているんだけど、だんだん地面がすごく不安定で急になる。それで私は足が地面にすら触れないほど早く走るの、すると体が宙に浮かんで、それがすごくリアルで素晴らしいの。自由と安らぎを感じる。そして気が付くの、完全に独りだって。それで目が覚める。この話をしたのはあなたが初めて。」

トムはサマーの話を聞いて、自分はサマーにとって特別な存在なんだ、と感じます。この夜でサマーの引いていた一線がすっかり薄くなったと実感するのです。そうしてトムは、サマーとの関係に疑問を抱き始めます。「愛してる」と言って良いのか?関係性を確かめて良いのか?そこでトムは、妹のレイチェルに相談します。するとレイチェルは、自分だったら確かめる、とアドバイス。

Molly
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こちらの若かりしクロエ・モレッツの演じるレイチェルはすごくしかっりしていて活発で、トムと正反対に見えます。アドバイスも的確で兄思いです。そして相談相手に妹を選ぶトムに好感が湧きました。

©︎2009 IMDb

そしてトムは意を決して、サマーに「僕たちは一体、何をしているんだろう?」と問いかけます。「わからない。気にもしないし、私は楽しい、あなたもでしょ?」と言われやんわり流されてしまいます。このセリフは冒頭の言い争いで、トムが言ったセリフと同じですね。こうしてまたも、2人は関係性に名前を付けませんでした。

Molly
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私はこのシーンがすごく好きです。切なく、永遠に続くものは無いと実感しますが、楽しくて寛げる相手と過ごす、輝いた時間のかけらに見えます。この時サマーは、トムを運命の相手ではなくとも、失くしたくない素晴らしい親友だと、思っていたのではないでしょうか。この時に流れるカーラ・ブルーニの『Quelu’un M’a Dit』も、優しく少しアンニュイなメロディで、このシーンにぴったり。

2人の関係

そしてある晩、バーでサマーに絡んできた男をトムが殴った事がきっかけで、2人は喧嘩をしてしまいます。彼女を救ったヒーローの如く「君のために殴られた」と言うトムですが、サマーは「あなたはすごく無様だった」と落胆した様子。そんなサマーを見てトムは、今までの想いをぶつけます。それでも2人の関係を、友達だと言うサマーにトムは「僕から言わせりゃ僕らは立派なカップルだ!」と怒鳴ったのです。

Molly
Molly

恋心があるからこその行動なら不思議はありません。でもサマーからしてみれば、勝手に守られた事や、トムらしくない行動が気に食わなかったのかもしれません。

しかしサマーは雨の中、トムの家まで謝りに来ました。トムは君が朝目覚めて、僕と違う気持ちになっていない証が欲しいんだ。と言います。そんなトムにサマーは「それはできないわ。誰だって無理よ。」と切なく、自分勝手な真実を告げるのです。

Molly
Molly

ある日突然、今とは違う気持ちになるかもしれない。そんな愛を信じられないサマーの気持ちを感じます。トムにとっては酷な話ですが…。よくサマーは小悪魔だビッチだと言われていますが、彼女の考えは冒頭から一貫しています。「愛を信じられない」のです。もちろんこの様に、名の無い関係を築く相手には迷惑ですが…。しかし彼女もこう言う関係を繰り返しながら、トムの言う真実の愛に出会える日が来るかもしれない、と期待し揺れ動いているのかもしれませんね。

トムのもとを去ったサマー

それからしばらくして、サマーは会社を退職。トムのもとを去ってしまいます。トムの気分はドン底へ落ち込み、やる事なす事上手くいきません。サマーに会おうとメールするも、友人としてなら会える、とキッパリ言われてしまいます。そんな中、同僚のミリーが結婚式を挙げることになり、トムも参加することに。電車で会場に向かうトムは、その車両でサマーに予期せぬ再開をするのです。おまけにサマーもミリーの結婚式に向かう途中。2人は偶然の再会で、しばし昔の様な楽しい時間を過ごします。

©︎2009 IMDb

昔の話をしながら楽しみ、ロマンチックなメロディに合わせて2人は踊りました。するとサマーは、自宅マンションで開くパーティーがあることを話し、トムを誘います。トムは関係が戻るかもしれない、と期待しながらパーティーへ参加することにしました。胸を踊らせながら、トムはサマーのパーティーへ向かいました。しかしそれは、トムが期待した物とは大違い。

Molly
Molly

このシーンは、トムの期待と現実を対比する2画面に分割されて進みます。切ないシーンではあるのですが、斬新でちょっと面白いです…。

そこで談笑しながら、トムは期待外れなサマーの態度に浮かない顔。そこに追い討ちをかけるように、婚約指輪を友人に披露するサマー。トムはショックのあまり、パーティーを飛び出してしまいました。

2人の考える「愛」の変化

サマーの婚約に酷く凹んだトムは、会社を休み束の間の自堕落な生活を送ります。バスローブで酒を買いに行き、通りすがりのカップルに絡む始末。

そして数日後になんとか職場に復帰するも、愛を信じられなくなったトムは、グリーティングカードは嘘っぱちだ、と会議でスピーチを繰り広げます。

「このカード、映画も、ポップソングも、嘘をついたと責められるべきだ…心の痛みや全てから。そしてそれは僕らの責任でもある。僕の責任だ。僕らは悪い事をしていると思う。人々は本当の気持ちを言える様になるべきなんだ。知らない誰かの考えた言葉じゃなくて。「愛」って言葉みたいに…。あれは何の意味も無いんだ。」

こうして会社を辞めたトム。彼はすっかり以前の様な、愛に対する気持ちを失くしてしまいました。そんな時、妹のレイチェルから「彼女しかいないって思っているかもしれないけど、私はそうは思わない。今は楽しい事ばかり思い出すだろうけど、次はもっとちゃんと振り返ってみて。」とアドバイスをもらいます。そしてトムは、サマーと『卒業』を観た時の事を思い出しました。

花嫁を奪い去ったは良いものの、その後のバスの中でこの先の不安に駆られ、笑顔を徐々に失う映画の中の2人。サマーはそれを見て号泣したのです。

Molly
Molly

たかが映画だ、と励ますトムに「私バカみたい。」と呟くサマー。この時サマーは、彼女にとっての愛の形に、気が付いたのではないでしょうか。運命とは何だろう…運命を感じた相手とバスに飛び乗ったはずの花嫁は、この先の人生を歩む不安を感じてしまった。本当の愛とは、人生を共にしたい相手とは、こんな形では無いのではないのか?彼女のトムに対する感情や、今まで自分が抱いてきた愛に対する考えの、答えになったのかもしれません。サマーこそが運命の相手だと信じているトムのもとを、彼女が去ったのも少し納得できました…。

トムの再出発

やがてトムは、建築家の仕事に就くために一念発起、奮闘し始めます。吹っ切れた様な彼は、自分が本当にやりたかった建築に真剣に向き合い始めるのです。

Molly
Molly

いきいきとしたトムが輝くシーンです。もしかしたら、活発でやりたい事を自由にやるサマーに、良い影響を受けていたのかもしれません。

そんなある日、トムがお気に入りの場所であるアンジェラスプラザのベンチに座って、街を眺めるていると、サマーがやって来たのです。久々の再会に2人は、ギクシャクしながらも談笑しました。そしてサマーはある日目覚めた時、あなたが運命の人では無いと気が付いたの。と切り出します。トムはショックを受け「 僕が信じていた全てのものは完全に戯言だったよ。君が正しかった。」と投げやり気味に言いました。

しかし、サマーは違うのです。「デリに座ってドリアングレイの肖像を読んでいたら男が来て、本について尋ねてきたの。それが今の夫。もし私が映画に行っていたら?他の場所でランチを食べていたら?そこに後10分遅く着いてたら?あれは運命だったの。そしてずっと考えてた。トムは正しかったって。そして「ただお互いに、運命じゃなかっただけ。」サマーは最後にそう言って、トムの手を握りました。

Molly
Molly

サマーはトムの信じていた様な運命の相手に巡り会い、愛についての考えが、すっかり変わっていました。つまり、トムとサマーの愛に対する考えは、すっかり入れ替わってしまったのです。

トムはそんなサマーの言葉と行動に戸惑いを見せましたが、その顔を見て、言葉を呑み込みました。

Molly
Molly

サマーは、それを教えてくれた、そして互いに愛に対する感情を共有した彼を、運命の相手ではなくとも心から大切に思っているのだと思いました。彼女の使っていた親友という言葉は、トムには酷でも、サマーから彼に対する、本当に素晴らしい感情だったのかもしれません。

そして別れを告げ、去っていくサマーにトムは思わず立ち上がり「心から君の幸せを願うよ。」と言います。サマーは振り返り、安心した様に微笑みました。

Molly
Molly

この言葉はトムの本心だったと、私は思います。そしてサマーは、自分が原因だったとは言え、傷ついているトムの事が気がかりだったのでしょう。サマーとトムの関係は一見、上手くいかなかった残念な恋愛の様ですが、私には互いの愛や人生に対する価値観や感情を共有した、大切な関係のように見えました。トムも傷つきながら、新しいものに出会えたのです。

トムの運命の人

サマーと出会ってから500日経ったある日、トムはある会社の面接へ。ラウンジには、同じく面接を受ける女性が先に待っていました。そして彼女はトムに「前に会ったことある?」と尋ねます。トムに心当たりは無いのですが、「アンジェラスプラザに行ったことある?」と彼女はトムのお気に入りの場所の名前を言ったのです。トムは驚いて「お気に入りの場所だよ!」と答えます。すると彼女はでも駐車場は別よね。と、偶然にもトムが以前、サマーに言った事と同じ事を言いました。彼女と談笑しながら彼は少し考え、そこにナレーションが入ります。

もしトムが何か学んだとするなら、それは壮大な宇宙の意義が日常に何の影響も及ぼさないと言う事だ。偶然、それが全て。偶然以外には何も無いのだ。トムはついに学んだ。奇跡など無い。宿命も、運命なんて物も無い。彼は理解し、確信した。

そして面接官に呼ばれたトムは咄嗟に「面接の後、お茶でもしない?」と彼女に尋ねます。しかし、人と会う約束がある、と断られてしまいました。寂しげに面接会場に向かうトム。すると彼女もトムを気になっていたのか、考え直してトムの誘いに乗ったのです。そしてよろしくね、私はオータム。」と名乗りました。

©︎2009 IMDb

たった今トムは、運命や奇跡はありはしないと学んだところですが、なんと彼女の名はオータム。サマーという夏が過ぎ去った後に、秋がやって来たのです。トムは私達観客の方を、意味深な眼差しでチラリと見たところで(500)日のカウントは(1)日目になり、新しい日々の始まりを告げて映画は終わるのです。

Molly
Molly

このシーンは本当に素敵。何て人生の本質のようでいてロマンティック、かつ前向きな終わり方なのだろう…。痺れます…。

ちなみにオータムとトムが出会ったビルはブラッドベリー・ビルディングと言う建物。他の映画でもロケ地として使われています。趣のある素敵な建築ですね。

Googleより引用

おわりに

テンポが良く、「卒業」の様に色んな映画のオマージュもあったり、最高の音楽をたくさん使っていたり、刺さる人には刺さる要素が満載で素敵な作品だと私は思います。結局運命はあるのか無いのか…意味深なラストシーンも、私は好きです。サマーによって新しい考えに出会い、辛い思いをしながらも自分とは違う思想を手に入れたトムに、過去の思い出を重ねてしまいます。最終的には、人との出会いや別れは辛くとも、自分にとって新しい世界が広がるチャンスでもあるのだと教えてくれました。サマーがトムによって愛に対する考えが変わった様に。色んな偶然が重なって、私はたくさんの人や物に出会う。そしてそれは運命や奇跡なのか…。私は少しトムと似ているので、信じています。サマーの様に信じない人も、トムの様な人も、大事なのは様々な価値観や思想に出会い、自分の世界を広げていく事なのでは無いかと思います。そこに正しいも間違いもありはしないのです。

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